FUMI

日記/葉書 など

ウー

わたしは白いお姉さんを何人か知っていた。

おねえさん、と呼びたくなるような女のひとたち。

年はみんな高校生くらいだった。

彼女たちのくちびるはいつも赤に近い腫れたぴんく色で、彼女たちの腹はいつもすらっとして細く、白く、彼女たちの二の腕はいつも少したるんで遠くから小さく見えるほどの黒子があった。

彼女たちは漏れなく視力が低く、昼はコンタクトを、夜は趣味の悪い眼鏡をしていた。

彼女たちの薄いお化粧は夕方になるとよく乱れて、瞼の色がぱきとなったり、ファンデーションに皮脂が浮かんできていたり、まつげにつけた黒いものが剥がれて頬に落ちてきたり、していた。

そのすべてが綺麗だったから、わたしはそのことを口にしなかった。

彼女たちにはいつも山積みの宿題があって、それをテレビを関心なさそうに眺めながら片付けていた。そばにはマグカップに入った冷たい緑茶があった。

彼女たちは私に優しく、いつでも手を繋いで遊んでくれた。かくれんぼや、お絵描きや、彼女たちが小さい頃に汚したおもちゃで、宿題が終わると暗くなるまで遊んでくれた。

彼女たちの身体は成熟しかけていて、わたしはその身体を狭いお風呂でまじまじと眺めて自分のそれと比べた。

彼女たちには同じ学校の同じ部活に恋人がいて、彼のことをわたしには話したがらなかった。

彼女たちはいくつか秘密を持っていて、それらは彼女の家の安いシャンプーのように彼女たちがゆらりと動くたびに香り立った。

彼女たちの胸は小さく、頭も小さく、足は細く、体毛は薄くて、服はそんなにもおしゃれではなかった。髪は脱色したことのない暗闇のような黒で、ときどき白い髪が混じっていた。

彼女たちはもうどこでも見かけなくなった。東京の大きなクラブや喫茶店や人混みの中にいたおねえさんはみんな彼女たちよりずっと綺麗で、お化粧が乱れたりも白髪があったりもしなかったけれど、彼女たちのようにわたしを惑わせる何かは持っていなかった。

彼女たちの家に彼女たちはもういなくて、彼女たちの白い肌はもう彼女たちのものではないのかもしれない。

彼女たちはやさしかった。彼女たちは本当に綺麗だった。