FUMI

日記/葉書 など

絶対的生活についての過去と想像

あたらしい紙マスクのしたで、わたしは美しい生活へ切実な妄想をはじめる ときたま舌に乗せる甘いものや友人の体温 昨晩整理整頓したばかりの棚や、きちんと雑巾をかけた床

わたしはいつかそういう家に住む

 

下より2020-05-15の手記

“もしも私の身体がホームだとするならば、内側にあるのは花を飾ったリビングと、ゆっくり眠り不安になれば朝まで本を読むための寝室と、静かで清潔なトイレ、朝しか入らないバスルームとホットミルクを作る美しく整ったキッチンだろう。

そのうちのどの部屋に居たってそこはいつもシェルターみたく安全で、外から刺さる意識からも守られている。

そして外側に通じたきれいに磨かれた窓があって、いつもその前に座ってぼんやり外を眺めるのだ。”

 

薄橙の照明はすこし眩しく、眠りにつく頃あかりを消すとその遠い闇の中がしずかに姿をあらわす。こわくなることはない。

そこは恐怖の皿の上にはなく、ただ孤独の空洞に身を置くことに、わたしは天使のような綿の眠を安心させるのだ。

理想的な話をすることになってしまったけれど、これは本当に平凡で、たとえば今にもっと視点を当てるとか、そういう類の救いの話しだと思っている。

絶対的生活、という本を買って本棚にまだ読まないまま置いてある。そういうこと。

連続性と刹那性と、花瓶に花をあげようとか、そういう類の話。

私が大切にしたくてたまらないのは、たとえばそういう生活なのだ。

 

下2020.5.22 14:03の手記より

“あなたもたまにわたしのホームにやってきて、話を聞いてくれて、ぽろぽろあなたも話をする。

あなたはわたしだけのものだったはずの寝室や、キッチンや、トイレやバスルームや窓をそっと触って綺麗に使い、リビングに飾った花を褒めてくれる。

足には泥などついていないし、わたしの家のものの使い勝手をよく知っていて、下手をして壊したりはしない。そしてあなたはわたしのホームのドアをわざと開け放して帰る。わたしは窓だけでなくドアからも、広い庭や世界を見ることができるようになって、そこからは新しいいい空気が通る。

あなたがわたしにもたらすのは、そういうこと。だからありがとう。あなたのところへも、また遊びに行きますから。”