FUMI

日記/葉書 など

(12:24)

わたしはつむぐ手を見ていた 蛍光灯の悪魔的な光り方や、彼女のしずかできれいな白眼にみとれていた。机に伝わる振動、意識を軽く浮遊させて色彩を認識した時、わたしはそのあざやかさに、そのここちよさに、感動に涙すらした。

 

万緑の中に吾子の歯生え初むる

 

結局のところ諦め切れないのだとわたしは声に出して言った。感覚のない髪をゆっくりと撫でて、苛立たない腦とその細く曲がった猫背に目をやる。どれもこれもすべてなのだろう どれもこれもほんとうなのだろう

冬を過ぎてすっかり痩せてしまった背骨の凹凸を反らす音を聞く。目の奥でしっかりと捕まえたその長い髪の影に、わたしはいとも簡単に納得することができる。

 

もしもし、と奥から出すための小さい声で静かに話しかける。もしもし、きこえますか。もしもし、もしもし。

 

この頃の緑のあたらしさには、人間が狂うようなその鼓動のときめきがある。さわやかな光の中に当たり前に毒が差し出されていて、それにわたしはどきどきしてしまう。明るい日光にクラクラと痛む瞳孔を瞼に包み、あの日見た絶対に信じている景色の色たちを再生している。